2008'07.15.Tue
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最近、男性主人公の本ばかり読んでいる。
『犬身』は最初女性だったけど、途中から雄犬になってしまったし。
そろそろ女性が主人公の本も補充するか!というつもりで、確認せずに図書館の本棚から抜いてきたら、これも男性が主人公だった・・・。
(まあ女性作家だから女性が主人公とは限らない訳で、私がアサハカだったんだけど)
それはさておき、よくこの内容とボリュームで、ハードカバー1冊として売り出したなぁ・・・と逆に感心。同じ題材をもっと煮詰めて、濃厚な短編にしたらさぞかし面白かっただろうに。
・・・いや、その短編、川上弘美に書いて欲しいかも。
図書館から借りてきた本の順番により、この次もまた男性主人公の本なのでした。
モテ期フラグかなんかだといいなあ。
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<追記>
主人公がお酒に弱くて「コップ1杯で酔っ払うので、燃費がよいと友人にうらやましがられる」という表記があった。
や、お酒が弱いのなんて全然うらやましくないけどなぁ。
飲酒の目的が、「酔っ払いたいから」じゃなくて「美味しいから」だからか。
作者は飲まない人なのかしらん。
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2008'07.14.Mon
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指が6本あり、数学と文書偽造の天才で、薬の過剰摂取歴を隠すために次々と名前を変えてきた男が、オーバードーズで担ぎ込まれた病院で、自らの頭脳と経験を駆使して精神鑑定士を欺こうとする話。
カウンセリングの会話の合間に、主人公の過去や名前を変えなければいけない事情が挟み込まれる。
そして、アメリカの医療制度、教育制度、刑務所事情の問題も浮き彫りに。
考えようによっては、悲惨な話。
主人公は、家庭環境もよくないし、指の数で苛められ易く、並外れた天才性のせいで特殊学級に入れられたり、犯罪を犯さざるを得ない状況下に陥ったりと、悲劇的な部分が多い。
ただ、そういう状況をめそめそ言い訳にする小説のほうが多い中で、この主人公の、何かのせいにせずに、能力めいっぱい使って生き延びよう、逃げ延びようとするパワーが美しくって。
↑タイトルのセリフを何度も繰り返し、自虐ユーモアは吐いても(解説にもあるように)自己憐憫はなし。
ウソツキの犯罪者を、読んでいる方はどんどん好きになれるのだった。
物語が大きく動いてからは、「この残りページ数でちゃんと終わるのか?」と、左手の中でどんどん残り少なくなるページにはらはら。
そして光が差し込むようなラスト。
面白かったー!
2008'07.08.Tue
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『ノーホエア・マン』を読んだ後、サラエボ包囲について調べていて行き当たった本(↑リンク先に飛ぶと、中身の画像が見られます)。
サラエボ包囲戦の最中に書き留められたもので、カラー写真満載のガイドブックの体裁をとって、戦時下の街の様子をユーモアたっぷりにレポートしている。廃墟、血まみれの路面、死体、燃える車。そんな中の、音楽、舞台、ダンス、結婚、子供たち。
項目は、気候、食事、通貨と物価などの、いかにもガイドブック的なものから、噂、共同墓地、街を出ること、なんていう独特のものまであって、淡々と皮肉に満ちた文章が並んでいる。
ちなみにサッカーの項目は「いつもそうだったように、ここでは外国人チームが負ける」
作り手には、「伝えよう」という意図とは別に、明確に「楽しんでやろう」という意志もあったんだろうと思う。そのたくましさが眩しい。
2008'07.04.Fri
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サラエボ生まれの作家さんが、英語で書いた小説。
アメリカに滞在中に故郷が包囲されて帰れなくなり、そのまま異国に残らざるを得なくなったのだそう。
大人になってから、本が書ける位までに、異国語を獲得して行くっていうのは、どんな感じなんだろう。しかも実際の状況が全く分からない自分の国を遠くから眺め、ぞっとする新聞の見出しに心を揺らされながら。
今、この人は何語で考えて、何語で夢を見るのでしょう?
ヨーゼフ・プローネクという人物を、色んな角度から描いた物語。
視点が変わったり、突然時代が変わったり、場所が飛んだり。
結果として、何かまぼろしの人物をずーっと真面目に追っかけていたような、誰かの夢に並走していたような、くらくらした気分になって、それが心地よかった。
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本編とはあまり関係ないのだけど、「サッカーの審判が殺されて、肛門をえぐり取られて発見された」という一節が出てきて。
サッカーの試合を観ていて、審判を心から憎む事というのは、多々あるわけですが、こういうことまでしようという発想は、恐らく日本人にはないなぁ・・・などと、変な所でびっくりしたりした。
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「知りたがりやの猫につまずかないように階段を降りた」という箇所が好き。
こっちを見上げながら足元にまつわりついてくる猫の様子が、ありありとね・・・。
つまり作者は猫飼い経験があるね!
2008'06.20.Fri
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ちょっと滞っておりますが。
しかし『ラスト・フレンズ』はとんだ釣りドラマでしたねー。
閑話休題。
自分の中身は半分犬である、本当の犬になって好きな人に可愛がられたい・・・という願望を持つ女性が主人公の、大人のファンタジー物、というのかな。
図書館で借りた時には、あまりの分厚さにびっくり。
序盤は遅々として読み進めなかったけれど、物語が転がりだしてからは、寝食を忘れという感じで、あっという間。
まさか本当に犬になってしまうとは。
主犬公が慕う女性が、兄ばかりえこひいきする独善的な母親と、存在感の薄い父親、近親相姦を強いる兄という家族の、言わば「ベタなどろどろ世界」から逃れられない人で、そこの描写がきつかったのだけれど、それでも読むのは止められないのだった。
この人の描く世界や、セクシュアリティ観(とでも言うか)は、分かりたくないけれど、なんだか気になってしまう感じ。
(逆に、笙野頼子は、分かりたくもないし近づきたくもないという感じかも)
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