2008'06.13.Fri
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主人公のフランス人男性小説家が、本が書けない言い訳を延々くどくど語っているだけの本。
言い訳。しかもフランス男の。
どう考えてもうっとおしいのだけれど、何故か凄く面白く読んでしまった。
主人公の、勝手で、独善的で、(フランス人っぽく)浮気者なのに、なーんか憎めないキャラ設定や軽妙な語り口がよかったんでしょうか。
主人公は勝手なんだけど、愛には溢れていて、この本を読んで、お母さんに連絡を取りたくなったフランスの読者がたくさんいたというのが分かる感じもよかった。
大体、男性一人称の言い訳本って、「ぼくはこんなに素晴らしい人間なのに誰も愛してくれない」みたいな了見で、他人の愛情は見過ごすわ、自分だって自分を可哀想がるばかりで人をちゃんと愛さないわで、大概にしろって言いたくなるけど、本書の主人公は、その点ではがっちり家族や女達(!)を愛していたものね。
作者自身がモデルだそうで、本が書けない作者が、本が書けない作家が主人公の本を書いて、その主人公が作中で『母の家で過ごした三日間』って本が書けなくて悩んでいて、途中で出てくる書きかけの本が、さらに作者(小説の主人公)をモデルにした作家が主人公で、やっぱり『母の家で過ごした三日間』って本を書きあぐねていて・・・っていうぐるぐる構造も面白かった。
それにしても、フランス人の肉欲って、ほんとうに獣のようで、日本人とはちょっと相容れないなぁ・・・と思うのだけど、フランスで日本映画がウケるのが面白いなぁ。
「他と違うもの=よきもの」という感覚から来るものなのでしょうか。
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2008'06.10.Tue
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クロアチアの小説。
4月1日生まれの主人公の、数奇な人生を描いた物語。
時代設定は、チトー時代と、それ以降あたり。
知らない国の小説なので、本国の人が読んでも「数奇」なのか、本国では普通のことなのか、理解できない所も多かったけれど、しかも主人公が私の嫌いな、自分はひとかどの人物だと信じて疑わないけど社会的には役立たずの、自意識過剰の勝手最低男なのだけど、小説としては不思議なくらい、やたらと面白かった。
内戦っていうのは、なんか政治上の駆け引きやらなにやらよりも、まず、「やらないとやられる」という不安感をそれぞれが持ち過ぎた結果なのかもなぁ・・・などと考えた。
歴史っていうものを、俯瞰して全体的に把握する才能が皆無なので、旧ユーゴの複雑な構造をきちんと理解はできないと諦めてはいるのです。
ただ、仮に自分の国だったとしても、政治家の思惑やら外交策やらは実際あんまり分からずに生きているわけだし、その国の普通の人が普段、どんなことを常識として、どんな空気感の中で生きていたかは、映画やら本やらから得られる感じをちょっとずつ重ねていけば、何かしかは分かるはずで、そういうのを目指そう・・・と思っていたり。
徴兵検査で不合格だと、クロアチア人は悲観して自殺し、セルビア人は歌いながら大喜びで帰るんだとか(いや、逆だったかな)。
狭い範囲の中でも民族性って違うものなのね。
あと、サッカーの才能はあったのに、親がワイロを出せるほど裕福じゃなくて、ベンチにも入れなかった・・・っていう事情なども。
2008'05.24.Sat
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フランスの人が書いた、アメリカが舞台の小説。
タイトルは架空の、廃坑を抱えた小さな村の名前。
孤児で浮浪者の主人公の目を通じて全ての事件、村人たちのバラエティ豊かな人生が描かれていくのです。
起こる事は、事故や恋愛や勘違いや悲劇や追いかけっこや死や犯罪摘発や山登りなどなど盛りだくさん。
様々な事件や出来事を通じて、主人公がまっとうな人生を獲得していくのです。
でも小説のほんとうのメインは、ひとつひとつの出来事や、登場人物の語る言葉を、主人公が少しずつ少しずつ自分なりに消化し、思考し、語るべき物語や哲学を獲得して行く様子のようで、賑やかな内容なのに印象は実に静謐。
たゆたうように読み終えました。
しかし妊婦にあんな無理させちゃいかん!>作者ってば
2008'05.20.Tue
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新聞の連載をまとめたものらしい。
ごくごく短い文章の集合体。
ひとつひとつがそんなにかちっと構成されてはいなくて、「素敵なブログ」みたいなユルさ。思ってたよりは面白くなかったかも・・・というか、短文の集合を読む時に自分が期待するもの、から離れていただけなんだろうけど。
ただなんか、この人と自分って、引っかかってしまう男の人のタイプ(ヒミツ笑)が一緒っぽくて、昔の恋愛の話にはやたら思い当たることが。
そういう話題の時ばかりはこっそりくすくすした。
だから恋愛小説の『人セク』はあんなに自分の中でしっくりしたのかしらん?
2008'05.20.Tue
![]() | 嫌われ松子の一年 中谷 美紀 ぴあ 2006-05-10 売り上げランキング : 150991 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
映画『嫌われ松子の一生』の、主演・中谷美紀による撮影日記。
役者に罵詈雑言を浴びせる横暴監督に、ネチネチ絡む中谷美紀が愉快。
撮影当時のゴシップ記事でも「監督と衝突」とか書かれていたけれど、成程。
一日一日の記述はとても短いのだけれど、切り取り方が上手くて、映画が出来上がって行く様子や場の空気がちゃんと伝わってきて興味深かった。
ああいうビジュアルやリズム感重視の監督さんの場合、撮影は動きの呼吸ばかりが重視されてしまうから、役者が役柄に入り込むのが難しいのだね。
あっという間に読み終わるし、特に後をひくわけでもないので、図書館向きだけど。
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