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猫の魚辞退

タイトルは長続きしないものの例え。映画・読んだ本の感想メモ。追記したり書き直したりも多いからあんまあてにならない。 日付は観た日付とは限らない。

2025'05.06.Tue
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2009'03.26.Thu
空ばかり見ていた (文春文庫)空ばかり見ていた (文春文庫)
吉田 篤弘

文藝春秋 2009-01-09
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長編の旅から帰ってきて、一休みには読み慣れた作家の短編集。
「流しの床屋さん」をめぐる色とりどりの連作でした。

文章表現が美しいのにはいつものことながら、息をのむ。
木陰から日向に出て、そして薄暗い室内に入った時の視界の変化について書かれた一節など、まるきり主人公になって外を歩いてるような気分になって何度も読んでしまった。

床屋さんの絡め方や、各小説の落とし方、そして最後にぴたりとタイトルがハマる全体の構成も見事。
頭のいい人なんだろうなぁ。
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2009'03.22.Sun
東京スタンピード東京スタンピード
森 達也

毎日新聞社 2008-12-13
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森達也が小説の形を借りて、現在のメディアのあり方に警鐘を鳴らした本。
視聴率重視のあまり、ウケそうな深刻なニュースだけを拾い上げて騒ぎ立て、社会の不安を煽るうちに、その不安がどんどん人々の心理に蓄積され、マイナスの大きなエネルギーになって、暴動を引き起こす、という話。

先日森さんがテレビで、「統計上は凶悪犯罪の数は明らかに減っているのに、マスコミの報道の仕方のせいで、まるで増えているような気分にさせられている」というような話をしていて、そうなのかー!と思った(増えているって信じてた)。
そういうことが積み重なって、「世間は危ない」「他人が怖い」「やられてしまう」という不安な心理がエスカレートして、「やらなければやられてしまうからやれ」・・・というエネルギーになってしまう様は、実際、前に読んだ『ボスニア内戦』という実話にも通じる現実的な話なんだよな・・・。

「小説」としての完成度は決して高くはなく、でもメッセージはばりばり伝わってくる、という種類の本。
こういう形がよかったのか、(小説内にも何故か登場する)黒沢清とタッグを組んでの映像化なんかの方がよかったんじゃないのか、とか、色々思う所はあるけれど、価値のある作品だったとは思う。

それにしても、暴動のひとつのきっかけが、ワールドカップのサッカーに日本が負けたこと、というのがサッカーファンとしては非常に悲しく感じました。
国立のPVでロシアに負けたのを観たからってそんなに暴れないよ!(この辺りの点は、サッカーファン視点でも別に書きたいところ・・・)
2009'03.22.Sun
ああいえばこういう。 このあと続けてもう一回っていうのは、きついかもああいえばこういう。 このあと続けてもう一回っていうのは、きついかも
ミル・ミリントン、[訳]岩本 正恵

河出書房新社 2005-02-11
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翻訳者目当てで手を出してみた、元々は作者がブログで書いてた実話を元にした小説。
イギリス人男性が、ドイツ人女性との暮らしについての愚痴を書き連ねた本。
延々と支離滅裂な夫婦喧嘩が続くのだけど、語り口が軽妙なので、全然嫌味たらしくなくて、凄く面白かった。
なのに表紙が最悪。もっと素敵な装幀にして、『ブリジット・ジョーンズ』とか『ぼくのプレミア・ライフ』とかと並べたら、愚痴本として売れたかも知れないのに・・・。

物語のうちの半分は男性の職場事情。出世やら異動やら不正、トラブルやら。
読んでいて、そういえばこういう光景が出てくる小説ってほとんど読んだ事ないなぁと気がついた。なんだか自分が読む本の主人公の職業は、みんな、作家とか医者とか教師とかばっかりな気が(偏ってる・・・)。

主人公の働きっぷりが「これで職場って成り立つの?」という位にあまりにも適当で、ちょっとイギリス人男性への見方が変わりました・・・。
2009'03.22.Sun
サーカスの息子〈上〉 (新潮文庫)サーカスの息子〈上〉 (新潮文庫)
John Irving 岸本 佐知子

新潮社 2008-11-27
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去年博多の空港で上巻だけ買っていて、「積ん読」していたもの(読書メーターのカテゴリ分けにもある!)。アーヴィングは手を付けたら一気にいかなければいけないし、しかも長い長い旅になるのが分かっているのだもの。
そうしてようやく手を付けたこの本、登場人物の把握までは時間がかかったものの、入り込んでしまえばどんどん読むスピードは加速。たぶん、下巻は上巻の半分位の時間で読み終わったんじゃないかしらん。
舞台はインド。主人公は整形外科医で、小人の遺伝の研究もしていて、さらに映画の覆面脚本家。色んな人の過去と現在が絡み合い、サーカスから象から映画界から、さらには猟奇的殺人事件というサスペンスまで加わって、豪華絢爛なストーリーだった。見事な大団円。
でもでも最後に残ったのは、凄く好きで、分かりたいと思っているごく身近な相手のことも、ほんと、かなり何にも知り得ない物だよね・・・というさみしい味わい。
そこのとこが、なんともいえず良かったのです。
2009'02.17.Tue
天使 (文春文庫)天使 (文春文庫)
佐藤 亜紀

文芸春秋 2005-01
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mixiに三崎亜記っていう人の『廃墟建築士』の広告が載り、そういえば「あき」って名前の作家さんでちょっと好きだなぁと思ったのに、それきり読んでいない人がいたはずだよ、日本ファンタジーノベル大賞を割と初期に獲った人で・・・と調べたらこの人でした。
連想広告効果。

第一次大戦頃のヨーロッパ(オーストリア、ロシア、セルビアあたり・・・また東欧かよ!)を舞台にした、歴史の裏側で暗躍する超能力者もの・・・というのが正しいか。
その能力が、ちょっと文章でしか表現し得ないような、不思議な感覚的なもので、読んでいると引きずり込まれる感じ。濃厚な「文学体験」が楽しめました。
続編も読まなくては。

しかしくっついてる豊崎由美の解説が無駄に腐女子っぽくてねえ。
解説を先に読んでいたら、気持ち悪くなって本編読まなかったかも。
ある種の読者に大しては物凄い訴求力を発揮するだろうけど、間違いなく間口狭めてる。
別に自分のエッセイなどなら、いくら趣味の世界を展開してくれてもいいんだけど、ジャンルの特定もされていない、人の本の解説で「萌えっ」とか書くのは私は感心しません。

またそれとは違う意味でamazonのレビュー(上記リンク先)が排他的。
「俺は面白かったけど、素人には読み解けないぜ」という論調が多いのが興味深い所。

・・・色んな狭い間口があちこちに開いている作家さんなのやも。
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