2009'05.07.Thu
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シリーズ3冊目はどうなるどうなる?と徹夜で読み切ってしまった。
1冊目が一番内に向いていて読むのがつらかったけれど、あとの2冊は娯楽としても素晴らしく、ただただ物語と一緒に突っ走れた。
とはいえ、シリーズ中で数々の人を作品で救う詩人が生まれる経過として、1冊目はとても重要な存在なのだが。
3冊目は、奴隷制をとる社会で、比較的恵まれた奴隷の立場に満足しきっていた主人公の少年が、色々な事件や辛い体験を通じ、社会の制度に疑問を持つようになり、価値観を変え、自分の居場所を探す逃亡の旅に出る話。
主人公は様々な仕組みを持つ共同体を体験して(それぞれ現実にも置き換えられる、とてもリアルなものだ)、自由とは?を考え、成長して行く。
知識が、その社会が持つ「常識」とか「普通」を崩壊させて行く様子。
物語が、追いつめられた人々の心を支え、救う様子。
言語芸術を共有する社会、それが一切存在しない社会。
とにかく言葉がどれだけの力を持っているか、についての緻密な物語だった。
おなかいっぱいに満足。
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2009'05.07.Thu
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書棚を片づけていて、ふと手に取ってぱらぱらめくっているうちに、釣り込まれて読み終えてしまった。
沢村貞子の半生記。
昔の浅草の雰囲気など、今住んでいるから余計に興味深い。
女であることが様々なハンデになった時代に、自分の道を悩みながらも自力で切り開いていく様子は、なんだか元気が出た。
で、自分の恋愛ベタに悩む所にきゅんきゅん。
正論を相手にぶつけたって、相手のコンプレックスを刺激するだけなのに、でも自分の理屈っぽさはどうしようもない・・・可愛げがない・・・とぐるぐるするあたりなど、めさめさ共感。
うわああああああ。
何故このタイトルなのだろうと思っていたけど「そういうことか!」と膝を打った。
こういう女っぽさ、分かりづらいけど、でもいいなぁ。
2009'04.07.Tue
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旦那さんに浮気をされた女性が別れる別れないの間で揺れ動く話。
どうなるどうする?という辺りを読むものではなくて、文章をぼわーっと楽しんで終わる感じ。あっという間に読み終えた。
そもそも川上弘美の文章は好きなので、ひとによってはどうでもいいことのディテールを懇々と書く所とか、その場は楽しめたといえば楽しめたけれど、後に残らないといえば残らない。
一ヶ所、母親との思い出の部分で、死ぬ代わりに山を一つ越えていた、という箇所だけ物凄く好きだった。
2009'04.07.Tue
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『西のはての年代記』の2冊目。
『ゲド戦記』とは全く関係ないのだけど、ここまではパターンがそっくり。
一冊目は少年が主人公で、最も打ち勝つべき敵は自分自身なのだと、悟るまでの物語。二冊目は少女が主人公で、密室の中で世界を学んでいく物語。で、社会のシステムがぐるっとひっくり返ることが起こる。一冊目の主人公は大人になって登場する。さて、三冊目は『ゲド』に倣うとすればさらに時代が進むんだろうな(とはいえ、『ゲド』は最初の二冊は好きで何度も読んでいるのに、三冊目は初回読んだだけで、記憶が全くないから分析ができないや)。
好戦的な民族に制圧された、豊かな文化をもつ民族が、書物を読むことも、所有することも禁止される中、秘密の部屋に書物を隠し守っており、主人公の少女がそこで読み書きを学ぶ・・・という状況だけでわくわく。作者は本当に「言葉」の持つ力を心から信じているんだろうなと思う。
主人公は母親が敵国の兵士にレイプされて生まれた混血児だったり、その家族は拷問で身体を壊していたり、さらさらと語られるシビアな状況はまんま、今の世界にも当てはまったりして。
そんな中で、どの女性キャラクターも生き生きと力強く、やっぱりこのシリーズも二冊目が一番心魅かれた。
2009'04.07.Tue
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映画『ブラインドネス』の原作。
会話も全部地の文として切れ目なく書かれている手法だけど、読みづらいことはなく、寓話として或る程度教訓や説教じみたことも書いてあるのだけど、うっとおしすぎずに適度で、とにかくどうなるどうなる?と追いかけてしまう「物語」の力強さ。
映画化がかなり原作に忠実だったことも分かって感心した。
寓話のビジュアル化として、色々な人種をキャスティングした所なんかも上手い。
主人公はなるたけ「神」にならないような道を選んだし、「神」が背負う大き過ぎる責任を考えれば当然なのだけど。
教祖になるのって、あれこれ広く考えが及ばないような、或る程度視野の狭いな人でないと無理だろうなと考えた。
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