2009'02.05.Thu
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天才的で謎に満ちたチェス・プレイヤーの話。
この人の描く主人公は大抵、自分の得意なことをちゃあんと把握していて、その世界の中にかっちり収まり、その世界における最高の方策で物事を詩的に語り、思考はのびのびと広げ、存在はできるだけ小さく折り畳んで、静かに静かに息をして「いた」人だ。
そう、この人の小説は大抵「今はなくなってしまった存在」について書いているので、どんなに素敵なことが起こっても、「ああ、しまいには哀しい結末を迎えるんだな」とか「今はもうそうではないんだろうな」と、覚悟しながら読む。
この小説もそういう小川洋子的世界にかっちりと収まる小説で、だから安心とも言うし、期待通りとも言えるし、でも・・・でも他と変わらないとも言える。
こういうのが読みたいからこの作家が好きなはずなのに、この妙な物足りなさは何なのだろう。
いしいしんじの最近の作品について、「期待される、いしいしんじ的なものばかり書いているのも難だものね」と考えたことを思い出した。
読者は勝手なもので、作家は恐ろしく大変なものだ。
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