忍者ブログ

猫の魚辞退

タイトルは長続きしないものの例え。映画・読んだ本の感想メモ。追記したり書き直したりも多いからあんまあてにならない。 日付は観た日付とは限らない。

2025'05.06.Tue
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2010'04.04.Sun
観てから大分経ってしまったアカデミー賞受賞作『ハート・ロッカー』。
公開後に、解釈について色んな意見が出た。それも「プロパガンダ映画」と斬って捨てる人もいれば、「反戦物だ」という真逆な人もいるし、ラジオの映画評からツイッターに飛び火して、論争が起こったりもしたし。
解釈の幅が出ちゃうのは、作り手があまし深く考えないで作っている場合と、非常にデリケートな問題を扱うために、明確な主張を出すと差し障りが出る場合とがありますな。

こんなに観た後、色んな人の意見を読んだり聞いたりして、あれこれ考えて楽しめた映画は久しぶりでした。入場料分のモト以上のものは得られたわぁ。
とはいえ、あまりに人の意見を聞き過ぎると、自分の意見が揺れちゃうので、そろそろ(遅過ぎるけど)書いておかないと。

自分は、プロパガンダか反戦か、二択で言うならプロパガンダだと思った。
「反ブッシュ」ではあるんですよ。それは使っている音楽からも明白だし(アンチブッシュの立場を明確にしているバンドの曲を使用)。
また、「戦争肯定」でもないと思う。
ただ、「世界の中心」とか「世界の警察」としてのプライドばりばりだったアメリカが、ブッシュが始めた言いがかり戦争のおかげで、イラクを余計に混乱させ、権威を失墜させてしまった。そうしてしょんぼりしていたアメリカ人の、プライドを取り戻す映画にはなってるように思う。
つまり、「改めてアメリカを肯定する」映画。

主人公は爆発物処理を担当する軍人として、かなりの手だれの人。
「人を殺す人」ではなく、兵器を無力化させる、「人を救うプロ中のプロ」。
全く罪悪感なく応援できる立場の軍人さん。
途中色んな失敗や挫折をし、意気消沈して国に帰るものの、やはり自分が得意とする仕事を貫こう、そこしか居場所はない、と戦場に帰って行く。
敵は、アメリカ人どころか、イラクの一般市民も犠牲にする、あらゆるテロリスト。がんばれ主人公!テロリストの仕掛けた爆弾から、罪のない人を救え主人公!
戦場には誇れる仕事を頑張ってこなしている人達がいる!
ブッシュはバカだったけど、アメリカ人全員がバカなんじゃない。
頑張れアメリカ!
挽回できるぜアメリカ!
・・・って感じがした。

そういう感想だったので、基本アメリカ人のための映画だなー、という感じがしてしまったけれど(だから「なんであれがアカデミー賞なんだかわからん!」とか日本人が文句言うのは筋違い)、爆発物処理の仕事ぶりとか、テロの色んなパターンとか、「こういうものなんだ!」と見せつけられることも多く、その後色々調べたりして(「人間爆弾」とか知らなかったよ)、リアルタイムで起こっていることの現状について、観る側の視野を広げてくれた点では、興味深い作品でした。

それにしても、テロリストの仕掛けた爆弾を解除して、また仕掛けて、解除して・・・って、イタチごっこにしかならんよなぁ。
各宗派(って表現でいいのか?)が同じテーブルにつくか、もしくはカリスマ性の凄い独裁者がまた台頭するか(これはこれでアレだが)、でもしないと、なかなか解決しないんだろうけど・・・。

-----
論争についてはこのへんで関連リンクやツイッターの発言がまとめられてる。
黒沢清が「たちの悪い戦意高揚映画」と発言したのは国際シンポジウム 「クール・ジャパノロジーの可能性」にて。
ustで聞ける。
『アバター』に対する感想(17分頃)が笑えた。その後『ハート・ロッカー』論がちょっとだけ。
PR
2010'03.10.Wed
楽しみにしていた、シネマヴェーラ渋谷の『映画史上の名作3』にようやく。

今回の目玉は、プレストン・スタージェスの未公開作『バシュフル盆地のブロンド美人』!!!!!!!!!!
この人、生涯の監督作品13本が、全て傑作との話を聞くのだけれど、ほとんど日本では観られないのです。文芸じゃなくてコメディな辺りが、日本ではウケないのだろうか。
観た事があるのは『レディ・イヴ』、『パームビーチ・ストーリー』、『サリヴァンの旅』の3本きりなので、楽しみにしてました。
猟奇的な彼女が大活躍の西部劇、とでもいいますか・・・。

映画は、もっそい気合いの入ったカウボーイの老人が、ブロンドのかわいい小さな孫娘に、銃の撃ち方を教えている場面から始まります。
「親のないお前が心配じゃ。大人になる頃にはワシは土の下でコヨーテの声を聞いているだろう。銃が代わりに身を守ってくれる。」
・・・と、お人形遊びをしたがる孫娘にがんがん銃を撃たせ、それが百発百中の腕。
そんなこんなな環境で成長した孫娘は、腹が立ったら即、銃を持ち出すブロンド美人に成長。彼氏の浮気も銃で解決!・・・のはずが、銃弾が当たったのは判事の尻。その騒動がきっかけで巻き起こるてんやわんや。クライマックスは銃撃戦あり、裁判あり。
なんか倫理的に今じゃちょっとマズすぎるのでは?位の、イカレポンチな内容でした。あー面白かった!

同じパターンを繰り返す→またそうなると見せかけてちょっと外す→かと思うとやっぱり!っていうギャグを嫌というほど盛り込んでいるのに、それにうんざりさせられることなく、観ていてうずうずしてしまう、呼吸の上手さってば!

他の作品の公開も待たれます。
願っていれば絶対機会はくるはず!

『バシュフル盆地のブロンド美人(The Beautiful Blonde from Bashful Bend)』
公開:1949年
監督:プレストン・スタージェス
主演:ベティ・グレーブル、セザール・ロメロ、オルガ・サン・ファン

-----
併映は『輪舞』。フランスのラブコメ。
これが英語字幕のみでねえ。
狂言回しがいて、カップルの片方が、別のひとと繋がってて、でもその相手はまた別の人と・・・とぐるぐると巡る、恋愛ものの連作みたいな形式。
話の流れは絵だけで分かるものの、言葉を追い切れず。
絶対この年代のフランス映画なら面白いはずなのに、味わい尽くせませなんだ。
英語、もっと勉強しないとなぁ。

『輪舞(La Ronde)』
公開:1950年
監督:マックス・オフュルス
主演:ダニエラ・ジョラン、シモーヌ・シニョレ、ダニエル・ダリュー、アントン・ウォルブック、セルジュ・レジアニ、シモーヌ・シモン、ジェラール・フィリップ

-----
この特集上映はあと2回位は行きたいな・・・。
2010'03.04.Thu


散々前評判を聞いていて、早く観なくちゃ!と気ばかり急いていた『フローズン・リバー』をようやく観賞。
そういえばこれ、日本公開と同時に、アクトビラでオンデマンド有料配信もされていたようだけれど、これで観た人どの位いるんだろう?
ちなみにウチのアクトビラは古いので、動画が再生できません。
ちょっとの時間差で、仕様ががつっと変わるんだから、テレビも一度買ったらしばらく使えるってモノじゃなくなるんでしょうねー。

それはさておき(そんなんばっか)、噂に違わぬ、いい映画でした。
ニューヨーク州の、カナダの国境に近い寒い寒い町を舞台にした、二人のシングルマザーの話です。
ひとりは貧困層の白人で、トレーラーハウスに住んでいる二人の子持ち。お家を新調する予定が、夫がその代金を持ち逃げして窮地に立たされる(トレーラーハウスって4000ドル位で買えると知ったよ)。
ひとりは夫に先立たれたモホーク族で、小さな子供を夫の母親に奪われたまま、貧しさもあって取り戻せずにいるのだが、目が悪くて仕事が思うようにできない。
この二人が、白人女性の方の夫が置き去りにした車を通じて知り合い、生きて行くために密入国業に手を染めるというストーリー。
かちかちに凍った川が国境で、そこを車で一気に渡る。向こう側でトランクに人を隠して代金を半額受け取り、戻ってきて業者に人を引き渡してもう半額をもらう。
氷が割れる可能性も、警備隊に捕まる可能性も抱えながら、それでも川を渡り続ける。

二人とも、怠け者な訳でも、アル中ヤク中な訳でもないのに、他に選択肢がないような苦しい状況に突き落とされていて。生きて行くため、子供のために、法を犯しても頑張るお母さんたち・・・というと、ケン・ローチの映画みたいなんだけどさ。
厳しい現実や絶望がつきつけられるだけではなく、ほっとする場面や人の気持ちの素敵な所が上手くミックスされた、ちゃーんとエンターテインメントになっている作品でした。とりわけ、クリスマスの夜の奇跡が素晴らしい(まさにクリスマスなエピソード!)。

これ、女性監督の作品で、主人公も女性で、作中で男性はほとんど重要な存在ではなく。
「男性の不在」とか「男性の権威の失墜」なんかがうっすらとただよっている、最近のアメリカ映画。お金持ちの社会も、そうでない社会も、同じようにその問題を抱えてるんだなぁと思いました。

唯一、白人女性の方の長男が、色々悩んだり苦しんだりしながら、自分なりに頑張るけなげな役で、がんばれアメリカ男子!と心の底から応援。
2010'03.03.Wed
春よこい [DVD]春よこい [DVD]
出演: 工藤夕貴, 西島秀俊 監督: 三枝建起

ビクターエンタテインメント 2008-12-26
売り上げランキング : 65041

Amazonで詳しく見る by G-Tools

WOWOWが今度、西島秀俊主演のドラマを放送するようで、ドラマPRも兼ねて西島特集中。その一環で放送された物。どうせなら『CURE』もやってくれないものか(『休暇』はやるようで、保存版にしようと思います)。

佐賀の漁港が舞台で、貧しい家族が主人公。借金のカタに船を奪われそうになって、とーちゃん(時任三郎)が船上で借金取りと揉み合って、間違って殺しちゃうんです。で、そのまま船もろとも失踪。奥さん(工藤夕貴)と、小さい男の子、ボケかけたおじいちゃんが残されたまま、何年か経ち・・・。
男の子は、お父さんの顔を忘れないために、交番の指名手配犯ポスターを見に通うんです。
それを知った新聞記者(西島秀俊)が、その姿を写真に撮って、ちょっと感動的な記事にする。
記者本人は(ナイスネタ!っていう下心もあるだろうけど)、「冷静に考えたら、正当防衛でそんなに長期な懲役にはならないだろうし、何で出てこないんだろう?この記事を見て本人が出てくれば、子供のためにもなるはず」っていう、善意のつもり。
・・・とはいえ小さな町では、記事のせいで、ほとぼりが冷めていた一家に対する村八分状態が再燃し、子供は学校でいじめられ、母親は仕事を干され、生活はますます苦しいものに・・・。
もちろんその後、西島さんは海よりも深く反省して、一家のためにひと肌脱ぐようになるのですが。

うわー!こういうことって自分もやってしまいそう!って、物凄くどきどきした。
「冷静に考えたら」「論理的に考えたら」「この方が結果的にはいいはず」とか、小賢しいこと考えて、物凄〜く余計かつ、せっかく当人たちが埋めた穴をわざわざ掘り返すみたいな真似って、本当にやっちゃいそう。
世間は、冷静かつ論理的には動かないもんです、だから難しいんですって、いつも肝に銘じないと。

作品全体的にはドラマだったらまあ地味な良作、だけど、お金払って映画館には行かないなぁ・・・という微妙な感じでしたが、何かその部分で異様に印象に残りました。

本作の三枝建起監督は、先日悪口を書いた『オリヲン座からの招待状』を手がけた方だそうで。レトロじゃなくってベタに古臭いテイストで、何かNHKの地方局が手がけたドラマっぽい雰囲気だなぁ・・・と思ったら、実際にNHKドラマの制作歴もあるみたいだった。
2010'03.03.Wed
ハルフウェイ [DVD]ハルフウェイ [DVD]
出演: 北乃きい, 岡田将生 監督: 北川悦吏子

ポニーキャニオン 2009-08-28
売り上げランキング : 1839

Amazonで詳しく見る by G-Tools

ルドandクルシの感想に、"人は得意な事と、情熱を傾けられる事が必ずしも一致しないから悩ましい。"と書いた後で、この映画を思い出しました。

最初脚本があったんだけど、主演二人の掛け合いがよかったために、敢えて台詞はほぼアドリブで構成したそうで(プロデューサーの岩井俊二の提案らしい)。
脚本の出来がどうだったのか、今となっては分からないけれど、数々の胸キュン☆台詞を紡ぎ出し、日本中のOLを虜にした(すみません、言いすぎですか?)カリスマ脚本家を監督に担ぎ出してですよ、全編アドリブって、こはいかに。プロデューサーとして、監督の得意分野を活かす方向に何故持って行かない・・・(その方向をOKした北川悦吏子も同罪だ)。
結果、偽岩井俊二映画みたいなぼわーっとした、映像綺麗だけどね、はー、みたいな作品に。だったら自分で撮ればよかったじゃん!

・・・まあ、これで脚本アリだったら良い映画になったかどうかは微妙だけど。
私の好きな北乃きいちゃんが、むかつく我が侭女キャラで、かなり引いた。でも高校生ってあんなもんなのかなー。
[1] [2] [3] [4] [5] [6
 HOME : Next »
ブログ内検索
プロフィール
HN:
sha
性別:
非公開
アクセス解析
バーコード

猫の魚辞退 wrote all articles.
Powered by Ninja.blog * TemplateDesign by TMP  

忍者ブログ[PR]