2008'12.12.Fri
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絶望のどん底にいた主人公(・・・が多いねオースター作品)の気持ちを引っ張り上げてくれたのは、短い期間に数本の良作を残して謎の失踪を遂げたサイレント映画作家の作品だった。映画作家の研究本の著作に没頭して、人生のピンチを乗り切った主人公は、謎の失踪の真相に巻き込まれていく・・・というような話。
祖父を思い出した。
祖父は日記やスクラップをこまめにする人で、旅先でもらったパンフレット、切符、食堂の箸袋、私が食べたお子様ランチの旗などなど、たくさんの記録をこつこつ積み重ね、そして死ぬ前に、それらを全部焼いた。
オノ・ヨーコを思い出した。
強烈な才能の傍にいて、強烈な影響を与え続けた人。
「夫を作品にした女」とまで言われた人。
展覧会なんかに行くと思うことが蘇った。
作品の形で「自分」を後世に晒し続けるって、画家は実際どういう気分なのかしら?
誇らしいかしら?いたたまれなくはないかしら?(人によるでしょうけれど・・というか、もう亡くなっているのだから聞きようがないけれど)
残したいという欲求、自分だけのものとして留めておきたいという欲求、自分の定めた終末に到達してこそ完成を見るという美意識。
作家に限らず、人が生み出す「作品」について、あれこれ考えてしまう小説でした。
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