2008'03.27.Thu
![]() | 人のセックスを笑うな (河出文庫) 山崎 ナオコーラ 河出書房新社 2006-10-05 売り上げランキング : 5600 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
原作を読んでから映画を観た。
大学生と、20も年上の女性の恋愛物。
原作は学生の一人称なのだが、学生の目を通しても、
20も下の若造と、思わず恋に落ちてしまった中年女の動揺や混乱が、ちゃんと透けて見えるのだ。
だから余計、この恋愛がかなしい。
映画の方は、主人公に片思いする同級生、さらにその子に片思いする同級生・・・・といった学生の若々しい恋模様の方に焦点を持って行っていて、まあ片思いする役の蒼井優がとてつもなくかわいいので、それはそれでよいのだけど、描いていて楽な方に逃げちゃったような気がした。
中年女のキャラは演じる永作博美本人の魅力に丸投げで、魅力的で奔放な中年女が、学生をぶんぶん振り回して手玉に取る感じになっているし、それがハマってはいる。
面白い。
自分だったら、二人の主人公が近づいて行く様は、原作みたいにゆっくり描くだろう。そこが醍醐味な気がするし、モデルを頼んで(当然)絵ばかり描いて、主人公をちょっと落胆させる所とか、ヌードを描く時もくつしたは履かせたままなところとかを、ひつこくひつこく撮るだろう。
いやぁ、初めて関係を持つところとか、凄くいいと思うんだけど・・・。
でも映画の監督はそれは選択せず、気に入った学生をモデル名目に家に引っ張り込んで脱がして喰っちゃいました・・・みたいな感じにもとれる描き方。
普通、中年女がそんな思い切ったことできるか!(いや、永作博美ならね・・・)
小説の読み方というのは人それぞれなんだなぁ、としみじみした。
でも監督だって紛う方なき中年女なんだから、照れずに中年女の葛藤を描いて欲しかった気がする。
映画は映画として何となく雰囲気があってよかったとは思うけど、あの長回しは「駄目な長回し」なんじゃないかしらん。
PR
2008'01.08.Tue
■やわらかい手
マリアンヌ・フェイスフル主演にひかれて観に行ったら、相手役はクストリッツァ映画の常連さんでした。濃ゆい・・・。
いくらでも下品になりそうなネタを、上品な小品に仕上げてありました。
不器用な年増の男女の恋物語でもあって、監督さんはカウリスマキが好きなのかなぁ・・・という雰囲気も。
でもなーんで、カウリスマキはあんなに俳優さんに何も言わせないのに「確かに恋に落ちてる」感じがして、なーんでこちらは妙な唐突感があるのだろう?
視線なのかな。じーっと相手を見つめる視線が重要なのかな。
昔、合コンキラーの友達に秘訣を聞いたら「気に入った人がいたら、ひたすら見つめるの」と言っていたのを思い出しました。なんとなく。
息子のわからずやっぷりにはムカムカしましたが、でもそういえば世の中の男の子っていうのは、確かに、部分的に妙に潔癖で頑固で横暴で甲斐性なしだものね・・・と観ているうちに納得しちゃったり。
■onceダブリンの街角で
ストリートミュージシャンもの。
演奏シーンや、CDをかけるシーンなど、自然な感じで音楽がたくさん使われているので、ミュージカルが苦手な自分にもすんなり入れた。
人と人が出会うことでもたらされる「変化」を描いていて、それが例えば「男の人と女の人が出会って恋に落ちました」みたいな霹靂っぽい変化ではなく、それまで歩いてきた人生に、人との出会いによって、ささやかだけど大事な力が加わって、ちょこっとだけいい方向に歩みが変わりました、という感じ(もちろん、その後のことは分からないけど)。その匙加減が、とてもよかった。
音楽の演奏シーンの説得力に感心していたら、みんな実際にミュージシャンなのですね。
マリアンヌ・フェイスフル主演にひかれて観に行ったら、相手役はクストリッツァ映画の常連さんでした。濃ゆい・・・。
いくらでも下品になりそうなネタを、上品な小品に仕上げてありました。
不器用な年増の男女の恋物語でもあって、監督さんはカウリスマキが好きなのかなぁ・・・という雰囲気も。
でもなーんで、カウリスマキはあんなに俳優さんに何も言わせないのに「確かに恋に落ちてる」感じがして、なーんでこちらは妙な唐突感があるのだろう?
視線なのかな。じーっと相手を見つめる視線が重要なのかな。
昔、合コンキラーの友達に秘訣を聞いたら「気に入った人がいたら、ひたすら見つめるの」と言っていたのを思い出しました。なんとなく。
息子のわからずやっぷりにはムカムカしましたが、でもそういえば世の中の男の子っていうのは、確かに、部分的に妙に潔癖で頑固で横暴で甲斐性なしだものね・・・と観ているうちに納得しちゃったり。
■onceダブリンの街角で
ストリートミュージシャンもの。
演奏シーンや、CDをかけるシーンなど、自然な感じで音楽がたくさん使われているので、ミュージカルが苦手な自分にもすんなり入れた。
人と人が出会うことでもたらされる「変化」を描いていて、それが例えば「男の人と女の人が出会って恋に落ちました」みたいな霹靂っぽい変化ではなく、それまで歩いてきた人生に、人との出会いによって、ささやかだけど大事な力が加わって、ちょこっとだけいい方向に歩みが変わりました、という感じ(もちろん、その後のことは分からないけど)。その匙加減が、とてもよかった。
音楽の演奏シーンの説得力に感心していたら、みんな実際にミュージシャンなのですね。
2008'01.08.Tue
![]() | みずうみ いしい しんじ 河出書房新社 2007-03-16 売り上げランキング : 171344 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
※謎な感想になっています
手を付けても付けても全く読み進めなくて、挫折続きだった本書を、ようやくお正月休みに読破。
みっつの、どこか繋がっているけどそれぞれ違う世界を描く、連作形式。
二章がほんとうにつらかった。
しんどい時に、混雑している駅の構内を無理矢理歩く時みたいな気分にさせられる。
「こんな風なことを書くなんて、作家はかなりきつい精神状態だったんじゃないだろうか」と心配になるような感じ。
そんなことを思いながら三章に突入したら話はあの「猫ちゃん」のことで、ああ、そういうことか、と、ようやく合点がいったのでした。
こういう時にいつも吉野朔実の『少女漫画家の瞳には三等星の星が光る』を思い出します。漫画家が、人生でどんなことが起こっても、きっと自分は作品のネタにしてしまうのだろう、と苦悩する話。
それでもかかざるを得ない、作家の業、を思います。
2007'12.27.Thu
再会の街で
家族を失った痛みに耐えられず、幻想の世界を彷徨う男性をコメディ出身の俳優さんが演じる・・・という『フィッシャー・キング』を思わせる映画。
そう、あれからファンタジーをとっぱらって、真面目に真面目に作ったらこうなる感じ。
ちょっと途中まったりした部分があったけれど、基本的に、出てくる人が、それぞれのやり方で人を愛しているので、気持ちよく観られた。
相手を助けたい、という気持ちが、純粋に相手だけのため、ということはあまりなくて。
無意識か意識的かはともかく、救うという行為を、自分の方が必要としていたりするのだよなぁ、というようなことを考えたり。
ドナルド・サザーランドの役が、『レイニング・ストーンズ』の牧師さんばりに「融通の利く大人」としてかっこよかった。
家族を失った痛みに耐えられず、幻想の世界を彷徨う男性をコメディ出身の俳優さんが演じる・・・という『フィッシャー・キング』を思わせる映画。
そう、あれからファンタジーをとっぱらって、真面目に真面目に作ったらこうなる感じ。
ちょっと途中まったりした部分があったけれど、基本的に、出てくる人が、それぞれのやり方で人を愛しているので、気持ちよく観られた。
相手を助けたい、という気持ちが、純粋に相手だけのため、ということはあまりなくて。
無意識か意識的かはともかく、救うという行為を、自分の方が必要としていたりするのだよなぁ、というようなことを考えたり。
ドナルド・サザーランドの役が、『レイニング・ストーンズ』の牧師さんばりに「融通の利く大人」としてかっこよかった。
2007'11.05.Mon
■残虐記 桐野夏生
新潟少女監禁事件がモチーフ、とのこと。
この本を手に取る際に、下世話な興味みたいなのがなかったといったら嘘になるのだけれど、それを打ち砕いてくれるだけの力を持つ、人間の想像や妄想の力の底知れなさを描いた「小説」だった。
・・・とはいえ、不愉快な作品であるのは事実だし、明確な小説上の真実も示されないので、あまり人には勧められないけれど・・・。
この作者の作品は初めて読んだけれど、他のにも手を出してみようと思った。
不愉快だけど文章に引っ張られるし、その不愉快さも 笙野頼子みたいに受け付けないものじゃない。
人の記憶や嘘の仕組みにすごく興味があった時期があって、あれこれ本を読み漁っていた時分を思い出した。
人の思い込みや願望や妄想が、記憶を捏造してしまう話とか(例えばアメリカで、カウンセラーが患者に対し「抱えている問題の原因は、幼児期に親から性的虐待を受けたせい」と決めつけ、患者が「本当はそういう体験があったのに今まで忘れていた」と思い込まされる・・・という問題が多発している話とか)。
ある出来事に対して、あるのはそれぞれの主観でしかなく、「たったひとつの真実」なんてものは存在し得ないように思う。
あった方が楽なのは確かだけど。
新潟少女監禁事件がモチーフ、とのこと。
この本を手に取る際に、下世話な興味みたいなのがなかったといったら嘘になるのだけれど、それを打ち砕いてくれるだけの力を持つ、人間の想像や妄想の力の底知れなさを描いた「小説」だった。
・・・とはいえ、不愉快な作品であるのは事実だし、明確な小説上の真実も示されないので、あまり人には勧められないけれど・・・。
この作者の作品は初めて読んだけれど、他のにも手を出してみようと思った。
不愉快だけど文章に引っ張られるし、その不愉快さも 笙野頼子みたいに受け付けないものじゃない。
人の記憶や嘘の仕組みにすごく興味があった時期があって、あれこれ本を読み漁っていた時分を思い出した。
人の思い込みや願望や妄想が、記憶を捏造してしまう話とか(例えばアメリカで、カウンセラーが患者に対し「抱えている問題の原因は、幼児期に親から性的虐待を受けたせい」と決めつけ、患者が「本当はそういう体験があったのに今まで忘れていた」と思い込まされる・・・という問題が多発している話とか)。
ある出来事に対して、あるのはそれぞれの主観でしかなく、「たったひとつの真実」なんてものは存在し得ないように思う。
あった方が楽なのは確かだけど。
ブログ内検索
カテゴリー
最新記事
プロフィール
HN:
sha
性別:
非公開
アクセス解析