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猫の魚辞退

タイトルは長続きしないものの例え。映画・読んだ本の感想メモ。追記したり書き直したりも多いからあんまあてにならない。 日付は観た日付とは限らない。

2025'05.07.Wed
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2010'01.22.Fri
新年初エントリー。
今年もよろしくお願いします(今更)。

新ドラマも拾い切れず、お正月映画もさっぱりな今日この頃、観て以来ずーっと尾をひいて心に残ったままの、NHKの阪神・淡路大震災15年特集ドラマ『その街のこども』。

子供の時に震災を経験して、今は神戸から離れて暮らしている男女2人が、1/16の夜に神戸の街を歩きながら色んな話をする、という、森山未來と佐藤江梨子2人芝居に近いシンプルなドラマで。
1/17早朝の追悼式場面は、当日の実際の様子を撮影したものを使ったらしい(朝撮影した素材を、夜ドラマとして放送)。

女性の方は、震災で親友を亡くしたという設定。男性の方は、震災時に親が法外な値段で屋根修理を請け負って大儲けして(震災バブルってやつでしょうか)、そのせいで神戸の街にいられなくなり、母親も出て行ってしまった、という設定。

「友達を亡くした」というのは、本人からしたらとてもとても大きな出来事でも、家族を亡くしたり、自分の家が壊れたりした人に比べたら、相対的にはささやかな傷になってしまう。大っぴらにぶちまけて悲しんだりすることが憚られるかも知れない。
「親があこぎな商売をした」なんて、無力な子供だったにしても、そこから受けた傷については、それこそ大っぴらには言えない。

言えない傷は、深く深く、ずっと残る。
震災モノというと、絵になりやすい悲劇がクローズアップされがちだ。でも、本当はそれだけじゃない。ささやかだったり、美しくなかったりする傷、癒されないままひっそりと胸の奥に眠る傷は、たぶんもっともっとたくさんあるんだ、と今更ながら気付かされた。
人の気持ちや、人との関係性ががらっと変わってしまうことだって、数多くあっただろう。えげつないことも、たくさんあっただろう(劇中でも「焼き芋1本2000円で売りつける人がいた」って話が出ていた)。15年たって、そういうことにもスポットがあてられるように、ようやくなったんだ。

静かに静かに会話を積み重ねることで、複雑に入り組んだ人の気持ちを描き出す、いいドラマでした。


森山未來が演じた男の子は、父親のやったことを、「それが相場。需要と供給。」と割り切ろう割り切ろうとしながら、どこかで思い切れていないという役柄。
物語の冒頭は、知り合った女性と震災話をしている時に、(観ているこっちも腹が立つ位の)やたら冷めた嫌な物の考え方を示して、彼女を怒らせ、席を立たせてしまう。
その後、再会してもっと話した結果、それが本心ではないと分かるのだけど。

でも、現実に同じようなことがあったら、たぶんドラマみたいな再会はないだろうし、そのまま席を立って、相手の奥にある傷には気付けないまま「嫌なやつ!」で終わらせてしまうのだろうな。
悲しい事に。
自分の最近の仕事上の経験で、性善説なんて馬鹿みるだけだよ!って思いかけたけど、でも、相手の中にあるいいものや、柔らかい部分を拾おうとし続けないと、やっぱりダメだよね、と、人間に対して弱気になってた自分を奮い立たせることもできました。

大友良英さん担当の音楽もとてもよかった。サントラが出たら欲しいな。
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2009年ベスト、などが出てくる時期だけれど、2009年どころか、今までの人生で映画館で最も泣いた映画といえば本作でした。

観たきっかけは、監督がカサヴェテス(息子)で、主人公の、姉に臓器提供をするべく遺伝子操作によって生まれた女の子を演じているのが、『リトル・ミス・サンシャイン』のあの子だったこと。
そしてよく観れば、白血病を患う姉役は、『ミディアム』の長女アリエル役の子が演じていた。

死に至る病気に対し、本人と家族、それぞれがどう向き合ったかという話。
病気とどう闘うのか。どこまで粘って可能性を模索するのか。どこから死を認め、いかにそれを迎えるかを考えるのか。いや、それとも、死を認めたら負けなのか。
そうした戦いの中で、やむをえないと分かっていても如何ともし難い、家族それぞれが抱える孤独のやるせなさ。
それから、そうしたつらい状況下で恋愛が人に与える、とてつもなくキラキラしたパワー(この監督さんは恋愛の描き方がいつも素敵)。

出てくるキャラクターが、自分が猫の病気と向き合って、あれこれと逡巡した全てを代弁してくれているようで、誰の言い分も理解できて、上映時間の9割方、色んなことを思い出しながらおんおん泣いていた。
猫のことがなかったら、たぶん、そんなには泣かなかったし、登場人物の思いに沿えない部分もあっただろう。

特に、キャメロン・ディアズ演じる母親は、「闘う女性」として描かれていて、「ここで死を認めたら負け」という考え方。「もうこの段階にきたら、本人の好きなことをさせて死なせてやろう」という意見を徹底的にはねつけて、取れる手段は全部取ろうとする。
普段だったら共感できないキャラクターだけれど、どうしても大事な存在の死を諦めたくない気持ちだって、物凄くよく分かった。だってどうしてもどうしても死んだら嫌だもの。

そして。
映画が出した結論に、「君のチョイスは間違ってなかったよ」と言ってもらえたような気がして、さらに大泣きしたのでした。
もちろん「正しい」答えはホントはないのだけど、嘘でも一意見でも「正しかったよ」と言って欲しかったのだもの。

何事も観るタイミングだ。
でも普段、映画で自分には体験できないような状況を観ても、一生懸命、登場人物の気持ちに沿おうとあれこれ想像するけれど、それにはやっぱり限界があるのかもなぁ。
残念だけど。


猫の病気の時に、QOLっていう言葉を初めて知った。
クオリティ・オブ・ライフ。生活の質。
ホスピスにおける考え方で、残り少ない人生の質の向上を目指す訳です。
いかに本人がよきように、安らかに過ごせるか。

この映画でも、母親が医師から在宅介護を勧められる場面で出てきた。
母親は鼻で笑って却下するのです。「はぁ?QOLってやつ?冗談じゃないわ」。
私も最新鋭設備の動物病院で、マイタケのサプリメントとともにQOLを説かれ、空々しいものを感じてしまったのだが、ああ、人間も一緒か、と思って苦笑してしまった。

それにしても、エコだってQOLだって、生み出された当初は美しい理念に基づいていたんだろうに、何で胡散臭いものに変換されちゃうんだろう。
単なるキーワード化されて、それを振り回す人が増える割に、本来の理念がどんどん伴わなくなってしまうから、なのかしらん。
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映画はまぁ、普通に楽しめましたよ。
ゴハンは美味しそうだったし、俳優陣は、脚本をフォローしてそれぞれの個性を発揮できる力量の人達で固められていたし、真っ白な景色はまぶしくて綺麗だったし。
ただ、主人公の妻と子供が、なんか下品で異様に不愉快だったのが難・・・。

その妻子が、南極にいる夫に、手紙の替わりに壁新聞を送っていて。
ウチも父が海外留学をしていた時に、同じことしてたよ!とびっくりおかしかった。

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原作の方が面白いかなぁ・・・と思ったのだけど、映画の方がまだよかった。
こちらは絶対に一緒にお酒を飲みたくないタイプのおっさんのブログを読まされているような感じがしたよ。
つまりは、書き手との相性で、全然感想が違ってくるタイプの本でした。

・・・と、ちょっと友達の日記に反応して、更新ー。
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「猫語辞典」のキーワードでこちらにいらっしゃる方が結構いらして。
役に立てる情報でなくってすみません。
ちなみに、雑誌「ねこのきもち」の付録の猫語辞典は、長年の猫飼いにとっては全く新たな発見はありませんでしたよ。初めて飼う方にはいいかも知れないですが。
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杉並の某有名動物病院で、猫が「余命一ヶ月」と宣告されてから二ヶ月が経ちました。腫瘍は自壊しているものの、食欲もあって普通に元気です。
「もういらないのかな」と思っていた猫エサや猫草が在庫切れになり、買い足すこの喜び。
肩に力の入った、息詰まる短期集中看護モードから、穏やか長期戦に切り替え。やることは一緒だけど、気構えはちょっと違うような。

あの時その某病院で、
「余命一ヶ月、ただし、免疫治療をすればプラス一ヶ月は延ばせる可能性がある。ただし、通院が必要なので、ストレスの方が重い場合も・・・」
「免疫治療は一回15万ほどで、複数回行う必要がある」
「猫にとっての一ヶ月は、人にとっての半年に当たる。短いと取るか長いと取るかは飼い主さん次第。」
「・・・どうします?」
というようなことを言われ。
ウチの猫のストレスへの弱さや、それからやっぱり金銭的なことも考えて、結局医者の前で大泣きしながら「治療はしません。家で看ます」と返答。
そう返答してしまったことに、思い悩んだ日々でもあったりした。
「一ヶ月の長さ、短さ」もあったし、猫本人の目の前で「お前のためにその治療はできない、半年という時間はあげられない」と言い放ってしまった、というのも恐ろしいことのように思えて。

猫もある程度、コトバを解しているのでは、と考えてしまうのは飼い主の妄想ですかね。

・・・という長い前置きからこの永遠の猫モノ名作SFの、新訳の話。
もう旧訳を幾度も読んでいて、あちらのきりりとした日本語に馴染んでいるので、やっぱり「軽い」ように思えてしまったのだけれど、いくつか旧訳では省いていた箇所が判明して、それはちょっと嬉しかった。

それと、新訳は、猫語が英語に近い!
旧訳が「ゴロニャン、ニャオウ」だった所が
「ウェルルルルル?ユーノォウ(それで?わかってるだろ)」(括弧内ルビ)
・・・になってたり。Well, you know
昔より、日本語に英語が大分浸透してきてて、スペルが浮かびやすい分、訳する方も楽になったのはあるのでしょう。
ナウ=NOW だって、昔は浮かばなかったものね。
いいなぁ、英語の方が猫の発音には合ってるんだわぁ。
こちらの話すことを解すばかりか、向こうもそれなりに喋ってくれたら楽しそう。
きっと分かってて、喋ってる!とハインラインも思っていたのでしょう。

そんなこんなで、大好きな物語に新しい発見ができたという点で、新訳には感謝。

もちろん、例えば前書き
旧「世のなべての猫好きに」
(私が「なべての」という語を使うようになったのはこの前書きがあったから)
新「猫を愛するすべてのひとたちに」

最後の一行
旧「そしてもちろん、ぼくはピートの肩を持つ」
新「そう、ピートが正しいのだとぼくは思う」

・・・と、やっぱり旧訳の方が洗練されてる、というか私は好みなのだけど。
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異界を旅する幻想譚として、色んな読み方ができるのでしょうけど、私はこの物語の異界はインナー・スペースとして読みました。

理屈屋で内向的で頑固で意固地ないい年した大人が、自分の中の、つらい思い出も、考えないようにしていたことも、いつの間にか差し替えてしまっていた記憶も、全部全部ひっくり返した上で、「変わる」物語。
頑固な大人が「変わる」ためには、物凄いエネルギーや、恐怖や、つらい痛みが必要で、その象徴が歯医者さんだったのかなと。
いやもうほんっっとに、いくつになっても、歯医者だけは勘弁だものね。
同様にいい年した大人としては、クライマックスに心が震えました。
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